花火


いつもこの日記を、通勤の電車の中で書いていて、最近は夢中になって本を読んでしまっていたから書けなかった。

書きたいこと、たまっているのに。おそらくこのあと、森博嗣氏や朝顔について、書くのだと思う。


毎年、楽しみにしている花火があって、それはマンションの上の階から見ることができる。

19:30、その5分前、いそいそと階段をのぼって、腰かけて。よく冷えた缶ビールをあけて、そわそわと待つ。


ばーん、ばーんとはじまって、そのときはまだ、マンションから見てるひとは多くない。

やっぱりきれいだなあと、ビールをひとくちのんでは呟く。

背の高いマンションが、あそこにたたなかったら、もっときれいに見えたのにねえ、なぎ倒していきたいねえ。


ばーんとあがるたびに、あほみたいに、わーと言ってしまう。わー。わー。ふしぎだ。わーとかきれいーとかしか言葉がでないんだ。それでいいんだ。


花火が休憩にはいって、ひまなときに、しゃぼん玉をふいたら、母の頭にぜんぶ直撃して怒られた。いやでもきれいでしょう。ボトルがしろい鳩で、大のお気に入り。普段はゆびわとブローチといっしょにとまってる。名前はハト吉。


県のゆるキャラとか、ぞうとか、かえるとかくまとか、いろいろなものが夜空にあがっては、消えて、音がする。

今年は高くあがるものが多くて、よく見えた。うれしいなあ。


マンションから見るひとも、だんだんと増えてきて、にぎやかだ。みんな空をみあげて、おなじものを見ている。


最後にかけて、もうそれはもう、ぱんぱんばんばん、花火があがってあがって、消える前にあがって、暗い空がどんどんと明るくなる。黒から白へ、まぶしいくらいに、きらきらと、夜があけるみたいに、しらんで、そしてわーとしか言えなくなる。


胸をうたれるような夜空は、ここにもあるね。


終わって、きらきらと火花が残って、星になるみたいにひかっているあいだ、マンションでは拍手が鳴り止まなかった。

なんの拍手かな、今年も花火を見せてくれてありがとう、きれいだった、とても。ありがとう、ありがとう。祝福と感謝を。消えてしまうものに、時間をかけてくれてありがとう。すばらしい時間を、ありがとう。


来年も、見ていたい。そのために帰るから待ってて。